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大学入試センター試験
大学入試センター試験(だいがくにゅうしセンターしけん、National Center Test for University Admissions)とは、独立行政法人大学入試センターによって例年1月中旬の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われる日本の大学の共通入学試験である。国公立大学共通一次試験が大学共通一次試験と改められ、さらに改称し現在に至る。
正式名称は大学入学者選抜大学入試センター試験であるが、一般にはセンター試験と呼ぶ場合が多く、大学入試センター自身もセンター試験と称しているこのため本項では一般的な呼称である「大学入試センター試験」として記述する。また受験生の間では「センター」「セ試」で通じる場合が多い。また大学入試の願書等でDNCと記載されることもある。
概要全教科・全科目で設問の解答をマークシートに記入する方式となっており、記述式の設問はない。各科目ごとに決められている高等学校の学習指導要領に沿って出題される。すべての受験生を対象にしているため、教科書にある例題のような出題も多く、対策さえしていれば比較的容易に高得点がマークできる試験である。ただし、多くの受験生が高得点となるため、少しのミスが後々の受験に大きな影響を与えることもあるので注意が必要である。
1979年から1989年までの間、国公立大学の入学志望者を対象とした「大学共通一次試験」(共通一次)が実施されていた。これは、入学試験問題において奇問・難問の出題をなくしたり、歴史などの重箱の隅をつついたりするような設問をなくし、一定の学力基準を測るものとして導入されたものである。しかし、実際にはこういった設問を完全に排除することができず、1990年から、国立大学の共同利用機関である大学入試センターの実施する「大学入試センター試験」に変更し、私立大学も試験成績を利用できるようにするなど、試験自体を流動性のあるものに改めた。2006年には英語科のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用したリスニング試験として実施され、機械に関するトラブルも含めて話題となった。
国公立大学においては(一部の推薦選抜などを除き)出願資格を「センター試験で本学が指定した教科・科目を受験した者」と規定している。生徒の学力低下の懸念から、ほとんどの国公立大学ではセンター試験で5 (6) 教科7科目の受験が必須である。文系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史、公民、理科1科目が、理系では外国語、国語、数学2科目、地理歴史または公民、理科2科目が主流となっている。また私立大学の参加も年々増加している。私大の場合、センター試験の入学者選抜への利用方法は各大学が個別に設定している。
平均点はおおよそ6割程度になるように作成されているが、年度や科目によっては、想定以上のずれが生じることは避けられない。その場合は、翌年度の同一科目の難易度を、前年度に比べ逆にしてバランスを保とうとしているようである。つまり、ある年度の問題の難易度が低かった場合(平均点が高かった場合)、翌年度は難易度が上がり(平均点が下がり)、難易度が高かった場合(平均点が低かった場合)はその逆になる。このため、受けようとする科目の過去数年間にわたる平均点の推移を把握しておくことで、出題難易度をある程度は予測できるのである。
試験会場は、様々な大学、高校に設定されている。なお、試験1日目の前日の金曜日は、「設営準備日」として試験会場の建物とその周辺が関係者以外立入禁止となる場所が多い。
試験が行われる1月中旬は厳冬期に当たるため、雪により公共交通機関のダイヤに混乱が生じた場合には開始時刻を遅らせるなどの措置が取られることが多い。なお、センター試験が実施される2日間は全国的に大雪になったりぐずついたりすることが多く、「センター試験の日は雪の特異日」とも言われている。この日は、雪のあまり降らない東京でも異例の降雪確率を誇っている。
沿革
問題作成から試験実施までの流れセンター試験は、大学入試センターの「教科科目第一委員会」に所属している、国公私立の大学教員などを中心とした約400人が問題を作成している。出題科目の作業部会と点字問題の作成部会の計24部会が設置されており、委員の任期は2年で、毎年約半数ずつ交代する仕組みとなっている。
出来上がった問題は、大学入試センターの「教科科目第二委員会」に所属している、第一委員会での委員経験のある、国公私立の大学教員や学識経験者などの約100人によって点検される。出題科目ごとに計21の点検部会が置かれており、ここでは構成や内容、解答、用字・用語などの点検が行われる。続いて、国公私立の大学教員や学識経験者などで構成される「教科科目第三委員会」で形式や表現、各科目間での整合性、重複などの点検が行われる。また、点検協力者として、難易度や出題範囲が学習指導要領から逸脱していないかを確認するため、少数ではあるが高校の教員も参加している。
点検が行われた問題は印刷に回され、24時間厳重に警備されている保管倉庫に一旦保管される。その後、試験数日前に全国約700の会場に送られて、当日まで厳重に保管される。ここまでの過程で、全体で数千人が関わってくる。なお、問題用紙の試験場までの輸送も特別な専用車を用いて、警備員常駐で輸送されている。また、大学入試センターは警察庁や各都道府県の警察に対して、試験問題の輸送時における警備協力の要請を行っている。
大学入試センターは、機密事項であることを理由に、問題冊子がどこで印刷されているかを公表していない。大学入試センターの関連文書では「印刷関係業者」とだけ記載されている。
問題自体は、本試験用・追試験用の2セットが毎年作成されるのに加え、問題の漏洩に備えた「緊急対応用試験問題」が準備されている。実際に本試験として使われるものは直前に決定され、本試験で使われなかったものが追試験に回される。緊急対応用試験問題に関しては、毎年作成されるわけではなく、一度作成したものを修正・再印刷して保管されている。また、共通一次試験時代に模擬試験(三大予備校など)と国語の出典が一致したことがあったため、問題作成者も模擬試験の検査をし、出典が重なっていた場合は問題を差し替えている。そのため、現在では模試と実際の試験問題の出典が一致することはなくなった。しかし、講習会などで使われている教材までは目が行き届かないようで、理科や地歴公民などで似たような問題が出されることが多々あり、その場合にはそれぞれの予備校のWebサイトで報告される。
実施日程センター試験においても各大学が実施する入学試験と同様に、厳格に出願方法などが定められている。志願者は大学入試センターが配布している「受験案内」(無料)を参照しながら出願から受験までの段階を踏むこととなる。「受験案内」はセンター試験を利用する大学で配布されているほか、テレメールでも取り寄せることができる。なお、志願する時点で高校3年生の者(いわゆる卒業見込者 = 現役生)は志願票送付から受験票の受け取りまでを全て在学する高等学校に任せなければならない。ここが一般の大学入試とは大きく異なる点である。しかし、高校が生徒から預った志願票を大学入試センターに提出せず放置したために受験できなくなる例も見られるなど、高校を通して手続きを行うシステムには問題もある。大学入試という受験生の人生を左右するところであるから、高校が介入せず受験生本人が自ら出願手続きを行なえるように制度を改めるべきだとの意見もある。
本試験までの流れ
試験形式ほぼ全ての科目で、設問に対して与えられた選択肢の中から、受験者が正解と思うものの数字を選択し、それを解答用紙(マークシート)の指定された解答欄に鉛筆でマークする(塗りつぶす)、というものである。
外国語(英語リスニング試験を含む)・国語・地理歴史・公民の問題では、各問いに解答番号が「1」から連続して振られており、表示された番号と同じ解答番号の解答欄にマークする。理科や数学の一部も同様であるが、マークシートの解答欄は大問ごとに区切られ、解答番号も大問ごとに「1」から振られている。最初(第1問)から取り組む必要はないが、マークのズレを起こしやすいため注意が必要である。
数学における解答方式数学(「工業数理」の一部および「簿記」「情報関係基礎」を除く)の解答方式は例外的で、一部の問いを除き、問題文中にある「ア」「イウ」といった枠で囲まれた文字に当てはまる数字や符号を直接マークする形式をとっている。誘導形式が多く、解けない問題があると、その先はできないことがある。また共通一次時代にあった、いわゆる「ダミー」は無いために、自分で出した数値と問題用紙の桁数が違うとその数値は誤答ということになる。決められた区域内の文字のマークが正解とすべて一致しないと得点にはならない。
科目選択全科目は9グループに分類されており、この分類は同一日時に行われる科目の群と一致する。受験者は各グループからは1科目ずつ(すなわち、最大9科目)しか受験できない。出願する大学により指定された科目は受験する必要があるが、必要のない科目は受験しなくてもよい。出願時に受験する科目を指定しなければいけないが、これはあくまでも印刷部数のおおまかな数を把握するためであり、どの科目を受験するかは、試験当日に決定することができる。ただし、2教科以下の受験で出願している場合は、その教科数を超えて受験することはできない。また、試験時間中に急遽変更することもできるが、選択教科マーク欄のマークミスが発生しやすいため、注意が必要である。
なお、
の選択を希望する受験者は、出願時に「別冊子試験問題の配布希望」欄に配布を希望する教科を申請しなければならない。希望しなかった受験者には、試験当日に上記科目の問題冊子は配布されない。
センター試験では、高校での履修の有無などによる科目の受験制限はない。また、多くの大学では理科や地歴公民を必要数以上受験した場合、高得点のものを採用するため、とりあえず受験してみる、といった受験者もいる。 しかし、大学によっては、「選択解答できる者は、高等学校において履修した者に限る」といった受験制限をしている場合(「地理歴史のA科目」「工業数理基礎」「簿記・会計」「情報関係基礎」など)があるため、募集要項などで確認する必要がある。
マークシートに受験した科目をマークしていなかったり、複数の科目にマークしたりした場合は理由を問わず0点となる。2007年度からは科目選択欄の横に「チェック欄」が付けられ、マークミスを防止する仕組みが整えられた。なお、「国語」と「英語(リスニング)」は1科目しかないため受験科目のマーク欄はない。また、「外国語」において別冊子の配布を希望しなかった場合は、受験科目のマークをしなかった場合であっても「英語」として採点される。
受験特別措置疾病・負傷や身体障害等のため、解答方法、試験室、座席、所持品などについて、特別の措置を希望する受験生は、出願時に申請することができる。受験特別措置は申請に基づき審査され、受験可否とともに判断される。個別に「受験特別措置決定通知書」が送付される。
日常生活において使用している補聴器、松葉杖、車椅子等を持ち込む場合は、申請が必要である。
出願後の不慮の事故等で、受験特別措置を申請することもできる。ただし、申請する理由が出願後に発生した場合に限られる。志願者本人又は代理人が、受験票に記載の「問い合わせ大学」に、受験票と医師の診断書(形式任意)を持参、大学にある申請書に必要事項を記入し、申請する。出願時の申請と同様、大学入試センターで審査の上、特別措置が決定する。
特別措置の例
特別措置を希望する場合「早い時期に」下記の行動が必要、とされている。
個別の大学入試への影響国公立・私立問わず、各大学入試・選抜試験における受験特別措置について、要項に「大学入試センター試験における身体障害者受験特別措置方法に準ずる」と記載する大学があり、大学入試センター試験の基準が、判断基準として採用されている場合がある。
得点調整センター試験の本試験において、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが問題の難易差に基づくものと認められる場合には、「得点調整」と呼ばれる統計的処理が行われる。適用対象グループは、「地理歴史のB科目(3科目)」「公民」「理科のI科目(4科目)」の3つのみである。
センター試験終了約1週間後に行われる平均点中間発表の際に予告された上で実施される。対象となる受験者と対象とならない受験者間での公平性の観点から、平均点差のすべてを調整するのではなく、調整後も平均点差が15点となるように調整される。この15点の差は、通常起こりうる平均点の変動範囲である。
得点調整は各グループごとに「分位点差縮少法」という方式を使って行われる。分位点差縮少法とは、得点調整の対象となる科目のうち、最も平均点の高い科目と最も平均点の低い科目の得点の累積分布を比較し、図の縦軸の受験者数の累積割合 (%) が等しい点(等分位点)の差(分位点差)を一定の比率で縮小する方法である。また、平均点が最大と最小以外の科目についても、素点の平均点差が同一の比率で縮小されるように調整される。縮小の比率は、15点÷(最も平均点の高い科目の平均点 - 最も平均点の低い科目の平均点)と計算される。
しかし、実際に調整が行われることは極めてまれであり、センター試験の歴史の中でも数回しか行われていない。1998年度には上記のルールに従い、地理歴史において、日本史の得点を地理に近づける形で調整が行われた。また、共通一次時代の1989年度には、物理・生物があまりに低く化学が非常に高かったので調整が行われたが、これについては分位点差縮少法ではなかったため、0点でも50点近くにまで調整されたこともあり、批判が多く出された。ひどい例の場合、受験番号を記入して座っていただけで数十点獲得した受験生もいた。また89年度の場合、設定予告なしで行われたため、制度としても問題があるものだった。
外国語の難易度と点数の扱い英語以外の外国語は、外国系日本人や帰国生徒などのそれらの言語をいわば母国語または母語としていた人が多く受験しているため、英語に比べ押し並べて平均点が高い。特に韓国語と中国語の平均点は毎年、英語などと比べて数十点高い。これは朝鮮学校生徒や在日華僑などが受験生の中に多いためと推測される。事実、得点分布を見ると、ある集団だけが突出して高得点のところに集中している。外国語において得点調整が行われないことから、試験における公正さの観点でこれを疑問視する声が上がっており、得点調整を行うべきとの意見もある。一方で、平均点を英語など他科目に合わせようとするあまり「韓国語(中国語)を高校3年間だけ勉強した程度の学生が受ける問題にしては難しすぎる」という批判が高校教員の間で少なからず起こっている。
私立大学では学部を問わず、センター試験での英語以外の外国語の得点が認められる場合が多い。ただし、韓国語のみ認められない場合などもある。 国公立大学については、ドイツ語・フランス語は、学部を問わず認められることが多い。中国語も、比較的選択可能な大学は多い。
なお、外国語の試験で英語にリスニングが導入された結果、英語の総合得点(素点)が250点満点となるため、他の外国語の200点満点と50点の差が生じる。差分の調整方法は各大学によって異なる。以下にいくつかの例を示す。
入試における利用大学により、最終判定におけるセンター試験の利用法は異なるが、大きくいくつかの系統にまとめることができる。
大学入試に関する詳しい情報については、大学受験を参照のこと。
試験結果受験生は各大学に出願する前に自身のセンター試験での成績を知ることができない。そのため、解答時に問題用紙に自身の解答をメモしておき、後日、新聞などで発表される正解・配点と照合して自身の成績を推定する、いわゆる「自己採点」を行う。解答に「△(部分点)」はなく「○(正解)」か「×(誤答)」しかないので、これが唯一の情報源になるのだが、自分の解答を正確に控えておかなかったり、マークミスなどを犯していると、自己採点の点数と実際の得点が違うということが起こり、受験校を決める上で致命的なミスにつながることもある。
なお、現在では、採点結果を大手予備校に送ることにより、ある大学の志望者の中における成績の位置を知ることのできるシステムも整備されている。予備校は試験終了翌日の夜までに全国の高校・予備校・書店から申込者の自己採点結果を回収し、コンピュータシステムを使いデータを分析する。そして、試験終了から4日後には申込者に分析結果を配布するのである。予備校では、このデータ分析に加えて各高校などに配布する成績資料も同時に作成しなければいけないため、この時期は繁忙を極めている。なお、受験者の多くは複数の予備校に自己採点の結果を送るため、予備校ごとに順位や合格判定の結果に大きな差が出ることはあまりない。代表的なものでは、代々木ゼミナールのセンターリサーチ、河合塾のセンター・リサーチ(バンザイシステム)、駿台予備学校・ベネッセコーポレーションのデータネットなどが挙げられる。
センター試験と「マークミス」
2006年
5月25日、大学入試センターは1984年度以降23年間、解答用紙のマークシートに受験番号などをマークし忘れた受験生の答案でも0点にせずに、受験者を割り出して採点していた事実を明らかにした。
受験番号のマーク漏れなどがあると、電算処理でエラーが出て採点できない。センター試験の解答用紙は、模擬試験などでよく用いられる冊子型にはなっておらず、試験ごとに解答用紙が配布される仕組みになっている。そのためセンターでは、解答用紙に割り振られたコードや番号から受験者を割り出すことができないため、解答用紙に記入された名前や、座席順などから受験生を割り出し、手作業で受験番号を入力してきた。受験番号のマークミスなどがあった際の措置について、センターの公式サイトでは「個人が特定できた場合に限り、採点します」と説明していたが、実際には全員を救済してきた。一方、受験案内では「受験番号が正しくマークされていない場合は、採点できないことがあります」とだけ記している。
共通一次試験は受験番号の記入ミスを、1979年度から5年間は採点せず一律0点としていた。しかし、「一発勝負の重要な試験であまりに酷だ」との声が上がり、センター内に委員会を設けて検討した結果、救済することを決めたのである。センターでは「高校3年間の学習到達度を測るという趣旨も考慮し、解答とは異なる部分のミスに限定して教育的配慮をした」と説明している。
この救済措置について当時、文部科学大臣を務めていた小坂憲次は、「何年も受験のためにがんばってきた努力を、たった1つのマークミスですべてを失わせるのは、受験者の大半が現役生であることを考えるとあまりにも酷過ぎる」と、センターの対応に理解を示した。一方で文科省は「大学受験生を大人とみて自己責任を負わせるべきなのか、それとも子どもと見て手を差しのべるべきなのか、判断が難しい」とコメントしている。
なお、2007年以降の試験については救済について明示されるようになった。受験科目が複数ある教科(外国語を除く)については、採点者が受験者の回答科目を半ば推測的に判断することになるため、受験科目欄の塗り忘れを救済していない。ただし外国語は、別冊子配付希望を出していない受験生に限り「英語」とみなして採点を行う。同様の理由で、大問ごとに解答欄が設けてある科目(数学など)の解答欄を間違えた場合など、答案に直接関係のある部分のマークミスについては、実際にマークされた内容のまま採点が行われる。一方、答案に直接関係しない「試験会場コード」「受験番号」のマーク漏れ・マークミスは、個人が特定できた場合に限り救済が行われる。<
ref> センター試験Q& A - 大学入試センター< /ref> とはいえ受験場では受験科目欄のマークミスがないように何度も注意を喚起するように試験官用マニュアル(試験官が当日会場で受験生に注意事項などを伝達する台詞を書いた台本のようなもの)に記載されており、事実それに従って何度もの注意喚起がなされているのも事実である。
英語(リスニング)について導入までの経緯とその後2006年度から「外国語」で英語を選択した受験生には、「英語(リスニング)」の受験が必要となった。これは、「高校生は読み書きだけでなく、実用的な英語を身につけてほしい」という大学側の要望がある。当初は各会場のスピーカーで音声を流す案も検討されたが、設備面の問題や条件を均質にする配慮から、メモリーに録音された音声を再生するICプレーヤーによる「個別音源方式」に決まった。ICプレーヤーによるリスニング試験は世界初である。ただし、特殊なスピーカーを使用すれば、各試験会場の条件を均質化することができる、との意見もある。
当初、大学入試センターは、ICプレーヤーについて、「メーカーが出荷前に1台ごとに振動検査を行い、電池も新品を入れているため、途中で動かなくなる事態は考えられない」「プレーヤーは腰の高さから落として動作を確認しており、故障はまずない」と自信満々な姿勢を示していた。しかし、教育関係者などは、英語がセンター試験で受験者数がかなり多いことから、50万台以上の機械を使う試験で、1台も故障せず、1人の受験生も操作ミスをしないということが、果たしてあるだろうかとの疑問を呈していた。
2004年
9月26日には、リスニング試験の「試行テスト」がセンター試験を利用する大学を会場として行われた(全国503大学・508会場)。受験対象となったのは、2006年に現役受験生となった当時の高校2年生で、希望者の中から抽選された約4万人が受験した。試行テストは、本番で試験を円滑に行うため、大学側に実施の手順に慣れてもらうことや、ICプレーヤーの性能確認(聞こえや作動具合、ヘッドホンとイヤホンの違い)などが主な目的であった。なお、試行テストの試験結果は受験者には通知されなかった。この試行テストでは、ICプレーヤーによる大きなトラブルは発生せず、「個別音源方式で円滑な試験実施は可能」と大学入試センターは判断した。
しかし、教育関係者の個別音源方式に対する不安は現実のものとなり、2006年度のリスニング試験では、東京など20都府県の試験会場で、ICプレーヤーの故障などが発生したとされて、再テストが行われるというトラブルが相次いで発生した。約1100人の内1人にトラブルがあったとされ、三大予備校が実施したリスニング試験の模擬試験に比べるとトラブルの発生率が高かった。リスニング試験が実施された1月21日の夜には、大学入試センターの記者会見が開かれたものの、反省の弁だけであってセンター側からの謝罪はなく、当時の事業部長は、「トラブルの申告をしたすべての受験生に対して、再テストを受験させることに決めていた」「性善説に立っている」と発言した。しかし、その後当時の文部科学大臣が陳謝する事態にまで発展してしまった。主なトラブルとしては、電源を入れても音声が聞こえない、試験途中で音声が聞こえなくなる、操作をしていないのに音量が変化する、などがあげられる。トラブルの多くは操作方法のミスや勘違いであるため事前に大学入試センターのWebサイトで操作を確認できるようにしている。
2007年度は、前年度のトラブルを反省し、イヤホンを最初から装着するなどの対策を行ったが、227大学で少なくとも351人から「音声が聞き取りにくい」などとICプレーヤーの不具合があり、少なくとも381人が再テストを行った。
2008年度も2006年、2007年と同様の形式で実施された。2007年度より人数は減ったものの相変わらずICプレーヤーの不具合を訴える受験生がおり、175人が再試験となった。
実施形式80分の筆記試験後に行われ、解答時間30分・配点は50点となっている。ICプレーヤーは再生機能しかなく、巻き戻しや一時停止などはできない仕組みとなっている。
問題開始前や、各大問(第1問など)の合間には「~ページを開いてください」という音声が流れるが、これはあくまでも試験者に対して、問題が始まる旨を知らせるだけであって、必ずしも従う必要はない。また、次のページに問題が移る場合でも、同じ大問であれば「~ページを開いてください」という音声は流れないため、注意が必要である。問題音声が終了した後に、解答をマークシートにまとめて転記する時間は用意されていない。各設問ごとにマークする必要がある。ただし、問題音声が終了しても、試験監督者から解答をやめるよう指示があるまで、マークシートへのマークやマークの確認を行うことができる。各試験会場では、この問題音声終了から解答終了までの時間が一律に決められていないため、今後のマニュアル化が望まれている。
なお、約2,000円相当のICプレーヤーは、試験終了後希望する者は持ち帰ることができる。また、受験生が持ち帰らなかったICプレーヤーは、試験会場の大学で保管されているほか、希望する高校などに配布されて再利用されている。
ICプレーヤー特需
2005年の日本国内でのデジタルオーディオプレーヤーの市場は約250万台となっている。この数字に対して、センター試験では約50万台ものICプレーヤーが使用されているほか、予備校や模擬試験などで使用されるものも含めると、相当な数の市場となることが見込まれている。代々木ゼミナールでは、松下電器産業(現・パナソニック)と模擬試験で使用するICプレーヤーのリース契約を結んでおり、30万台のICプレーヤーを調達した。使用後のICプレーヤーをクリーニングする費用も含め、3年間で20億円に及ぶ。また、駿台予備学校・河合塾・進研ゼミでは、ICプレーヤーの調達費用の負担を軽減させるため、3者共同でソニーからICプレーヤーを調達した。この需要により、ICプレーヤーを製造しているパナソニックとソニーは特需に沸いたという。今後も受験産業での需要が見込めることから、大きな市場に成長することが予想されている。
再テストと救済措置個別音源方式でトラブルが発生した場合、試験監督者は機械の不具合なのか、それとも試験者の虚偽申告なのかを判断することができない。そのため、大学入試センターはすべての受験者からの申告を信用し、例外なく再テストが受験できるようにしている。
再テストでは、音声が中断してから以降の設問のみを答えられる、と決められている。しかし、試験終了後にプレーヤーの不具合を申し出ても、再テストを受けることはできない。また、大学入試センターは、テスト中に大きな音が発生しても、監督者からの指示がない限り、そのまま回答を続けるよう説明している。加えて、くしゃみや咳などの、周囲の受験者が発する音によってテストに影響が出たとしても、イヤホンで試験が実施されていること、音声は2回繰り返して再生されること、音量はテスト中に自由に調節できることなどを理由に、救済措置は行わない姿勢を示している。
ICプレーヤー
機械使い捨てに対する賛否地球環境や資源保護の観点から、ICプレイヤーを使い捨てにしていることを問題視する専門家もいる。しかし、ICプレイヤーを繰り返し使用する場合と、使い捨てにする場合とではコストの面で大きな違いが出てくる。業者への輸送経費や、電池交換・動作確認・清掃などを考えても、直接受験料として受験生の負担になるコスト増は避けたいとの大学入試センターの意向が見られる。なお、韓国の大学修学能力試験では、以前は問題をFM放送を使って各試験会場に送信し、それぞれの校内放送で一斉に聞かせるという形式をとっていた。しかし、受信などでトラブルが発生したため、現在では問題が録音されているカセットテープを校内放送を使って一斉に聞かせる形式に切り替わっている。音量や音質についてのトラブルで、一部の会場で一時停止が行われるが、日本のような大規模なトラブルは発生していない。また、アメリカの大学進学適性試験では、ポータブルCDプレーヤーを受験者個人で用意させ、問題CDを聞かせるという形式をとっている。以前はカセットプレーヤーを持参させた。
聴覚障害者への対応重度な難聴である受験者は、医師の診断書や学校での学習状況報告書などの必要書類を大学入試センターに申請し、センターの専門委員会(医師も参加)で審査を受けたうえで認められると、リスニング試験の免除を受けられる。また、聴覚に障害がある受験者は、「ヘッドホンでの受験(持参・貸与)」「補聴器を外しイヤホンでの受験」「補聴器のコネクタにコードを接続しての受験」などの特別措置を受けることができる。加えて、イヤホンが耳に合わない受験者は、医師の診断書を添えて志願すると、小型イヤホンの使用やスピーカーによる受験などの特別措置を受けられる。
なお、リスニング試験の受験を免除された受験生については、志望大学に通知される成績票で「リスニングを免除した」旨が記載される。この場合、点数の取り扱いについては各大学の募集要項に記載されている。
日程・出題科目2008年度の実施日程と出題科目は以下の通り。全6教科33科目。志望する大学の学部(または学科)が指定した科目を選択して受験する。ただし、例外として外国語では、「英語(筆記)」を受験する場合、志望する大学の学部・学科が「英語(リスニング)」を指定していなくても、リスニング試験を受験しなくてはならない。また、国語において、志望する大学の学部・学科が指定する特定の分野のみ解答する場合でも、試験時間は変わらない。
第1日
第2日
追試験
過去の問題とトラブル試験自体に関するもの
試験内容に関するもの
2005年度の本試験
2006年度の本試験2007年度の本試験
2008年度の本試験
英語(リスニング)に関するもの英語のリスニング試験では、ICプレイヤーの不具合によるトラブルが開始年度から毎年報告されている。2006年度は451人、2007年度は381人、2008年度は175人の受験生が再テストを受けることになった。リスニング試験に関しての一定確率でのトラブルはセンター側としても想定済みの事態であり、試験当日における対応マニュアルなども試験監督者に渡されている。
その他、機器の不具合以外のトラブルで再試験が認められる例が何件か報告されている。
2008年度の本試験
今後の計画過去問の再利用センター試験では、前身である大学共通一次試験を含めて過去に出題した問題、いわゆる過去問を再度出題したことはない。これは、問題を解いた経験がある受験生と、その経験がない受験生とで不公平が生じるのを避けるためである。加えて、教科書に載せられた題材も出題しないことが慣習となっている。これも過去問と同様に、履修した経験で不公平が生じるのを避けるためである。
しかし、問題を作成する過程で、センター試験や他の大学の過去問、模擬試験、教科書などと題材が重複していないかを点検する作業に、膨大な時間と労力を割かれる状況が年々深刻化してきた。また一方で、センター試験の問題は、各大学が入試問題を作成するときに参考資料とすることが想定されているため、学習指導要領に基づいた良質な問題を出すことが求められており、年々少なくなる題材から良質な問題を作成することは限界に近付いていた。
このような状況を憂慮した大学入試センターは、文部科学省や国立大学協会などと協議したうえで、過去問の活用を行う方針を固めている。良質な問題の収集と分析評価を行い、過去問を再利用するのである。導入時期は2010年度からとしている。対象は主に国語や英語といった教科における「出典文」とされ、設問ではなく、文章や題材が再利用される予定である。受験生にとって、センター試験の過去問演習は、現在よりも一層重要度を増すと考えられている。
科目選択
2008年
8月5日、大学入試センターは2012年度から、「地理歴史」と「公民」を統合して1科目とした上で、1996年度まで存在していた「倫理、政治・経済」を復活(既存の「倫理」と「政治経済」は存続)させることに加え、6科目を3グループに分けている「理科」のグループ制を廃止することを発表した。変更後は、「地理歴史・公民」の10科目から最大2科目を、「理科」の6科目から最大2科目を選択する仕組みになる。ただし、同じ名称の科目(世界史Aと世界史Bなど)を同時に選択することはできない。
解答教科の事前登録制センター試験では、出願時にあらかじめ受験する科目を指定しなければいけないが、これはあくまでも印刷部数のおおまかな数を把握するためであり、どの教科・科目を受験するかは試験当日に決めることができる。
大学入試センターは、2012年度から受験教科の事前登録制を導入する方針を固めている。現在の制度では、センターは教科ごとの正確な受験者数を把握することができないため、大量に問題冊子を印刷しなければならず、毎年億単位の印刷費の無駄を抱える一方で、一部の会場では問題冊子の不足も生じている。解答教科の事前登録制の導入は、これらの問題を解決するのが狙いとされている。なお、この事前登録制度の対象は「教科」であり、「科目」はこれまでと同様、試験当日に決めることができるという。
脚注関連項目
外部リンク
---------------------------------------------- 出典:「フリー百科辞典ウィキペディア」(2009-01-01)
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